2006年05月21日

ぼくが独立する理由 (その1)

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 ぼくがつとめているのは精神科の単科病院(とくに精神疾患を専門に扱う病院、つまり精神病院)の「作業療法科」だ。ここに5年近くいた(06年5月現在まだいる)。今までいろいろな仕事をしてきてが、それぞれ縁があってはじめ、そこからいただいた経験は、みんな今に生かされている。一部続いていることもある。

 作業療法は、いわば精神科のリハビリだ。しかし他の病院とちがい、そこでは治療といっても薬を飲むことと、ひたすら休むことくらいしか、やることがない。

 そんな中で、退屈しないため、日常生活のリズムを保つため、知覚、感覚、感情などの刺激や安定のため、体力保存のためなど、様々な屋内、屋外の活動、レクリエーション、小旅行や祭りなどのイベント企画まで、リハビリのプログラムが毎日ある。

 そんなもろもろを提供しながら、院内の何でも屋を演じ、患者さんの相談相手になり、悩みや将来のことを考えあったり--それらを含んで、リハビリはひとことではくくれない、広い範囲をカバーしている。

 そんな仕事に縁あってついたぼくは、これはまるで自分のために神が用意してくれたような仕事だ! と大喜びした。精神病院はぼくのいわば「古巣」。今度は何かの手助けができる出番が与えられたことが、とてもうれしかった。

 それに、作る仕事、言葉の仕事、食べ物に関する仕事などをやってきた経験のすべてがそこに応用でき、生かせるというのも、すごくついていた。

 数年前までは、自然食品の販売をしていたけれど、実際やっていたことのほとんどは、お客さんの世間話や悩みなどの聞き役だった。毎週通信を出し、読んでもらうことでコミュニケーションをとっていた。

 商品を介さないで、じかに人と話ができる、そんな仕事はないか、そのほうがよりダイレクトだ、そう思いはじめたぼくに、精神科のリハビリの仕事はぴったりとはまった。

 ぼくが得意とするプログラムを、リードすることになった。外回りの畑や園芸(自家菜園や田んぼ、食品の仕事)、音楽やギターの病棟流し(いうまでもなく)、ミーティングや言葉のセッション(言葉)、絵画や工芸など(木工などやってた)、( )の中は、それまでやってきた仕事だ。それまでやってきたことと分裂を感じずに、すべてのプログラムをのびのびやれたと思う。

 ところで、このところの精神医療は大変化を見せている。とくにこの十年間の変化には大きなものがある。法律も次々改正され、制度も無の状態から少しだけ踏み出した。

 ぼくが取得した「精神保健福祉士」という国家資格は、精神障害や心のトラブルを持つ人が社会生活をしていくための相談・援助職として約9年前に新設されたものだ。

 そういう取り組みが、ゼロからだけれどようやく始まっている。精神障害は、93年まで、障害としてさえ認められていなかった。患者は退院すれば、どんなに大変でもサポートがほとんど受けられなかった。ぼくは二十数年前に入院しているので、その事情は身にしみている。

 病院内のリハビリは、あくまで、社会生活に戻っていくための練習、向上のためにある。でも、実際にはどうだろう? 

症状がかなり改善している人が行き場を無くして何年、何十年と入院し続けている。短期入院でも、家族や人間関係、仕事場や援助機関とうまくいかなくて、何度も入院する。

 または、(病気の診断を受ける受けないに関らず)行き場がなくて、引きこもりや自傷やアルコールなどへの依存をしなければならない。一度レールからはずれたという意識から、苦しみを抱え、実際にもどこにも居場所がないと感じていたり。
 
 統計を見ても明らかだけれど、統計以上の多くの人たちが、もはや精神医療や福祉ではどうにもならないほどにあふれている。しかし専門の現場では・・・

 順調に作業療法の仕事に打ち込んでいたぼくは、それに情熱を傾けるほど、実際にそれが患者さんたちのためになっているのか? と疑問をつのらせずにはいられなくなった。

 「こんなに居心地いい病院から出たくないですよ、、退院したところで結局どこにも居場所がないから、親切なスタッフや仲間がいるここが一番いい」という言葉をきくたびに、また多くの患者さんの退院後の厳しい生活の様子を知るにつけ、病院という狭いシステムの中で精一杯やりながらも、

 何ができるのか? この苦しみはいつまで続くのか、、、多分に自分の投影もあったと思うけれど、そんな思いがますます強くなった。

                   (続きはその2へ)


posted by jksk at 10:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 私の歩んできた道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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